「エレクトラ」を観た ?まずはシリアスに。

23日、渋谷のシアターコクーンにて。
蜷川幸雄演出・大竹しのぶ岡田准一主演の舞台エレクトラを幸運にも観ることが出来た。

ソフォクレス作のギリシャ悲劇、つまり紀元前にギリシャ神話を元にして書かれた物語である。
にもかかわらず、現代に通じる普遍のテーマにまず感じ入ってしまった。
親子きょうだいの濃い愛情と憎しみはどんな時代になっても変わらないもの。
復讐とは、正義とは、権力とは、信念とは…といった部分は現代のアメリカとテロ、イラク戦争のこと(日本の姿勢も含めて)を彷彿とさせる。
蜷川演出の舞台作品を生で観るのは初体験だったのだが、なるほどこれがニナガワなのか!と誇張でも何でもなくて体が震えた。
コクーンという劇場空間を余すところなく利用して、16人のコロスの声を木霊させ足音を響かせる。
そのパワーに引けを取らないどころか凌駕するほどのエレクトラ大竹しのぶ)の声、セリフ、嘆きと怒りの感情表現。
まさしく彼女ありきの作品だと強く感じた。

加えてオレステス岡田准一)の美貌ときたら凄まじく、あの大女優を相手に見事に愛憎を演じていた。
セリフがややこもって聞こえる難点はあった。
しかし復讐に向う際の悲壮な背中とその後の狂気を予感させる血にまみれた裸のデコルテ、ギリシャ悲劇にうってつけの彫りの深い顔立ち(特にあの瞳)は素晴らしかった。

業の深い母・クリュタイムネストラ波乃久里子)は、毒婦・悪女であるのは間違いないのにその心の闇を思って私としては一番泣けてしまった登場人物。
息子の死の報せに母として泣き女として笑うシーンは圧巻だ。
彼女が登場してきた瞬間から私はどうしても中村勘九郎とダブらせて見てしまったが、それは姿形が(姉弟だから)似ているというだけではなくて、動作まで近いものを感じたからだ。
両者に共通する懐の大きさは歌舞伎という伝統芸能が育んだものなのだろうか。
どこかおかしみ、滑稽さ、ユーモラスさを秘めた芸の人である。
こういうタイプに私は弱い。

しかしなんといっても、とにもかくにも、大竹しのぶ
凄い人です。
カーテンコールでの彼女の顔をきっと一生私は忘れない。

とりあえず真面目バージョンでざっとした感想を書いてみましたが、明日はもっとくだけた調子で(つまりいつものぶっ壊れスミコ調で)書きます。

…って、おい!またシリーズにするのかよっ!