透明人間の蒸気(ゆげ)を観た その3

そして今回、ヘレン・ケラを演じる宮沢りえがその3度目の経験となった。
あれは人間じゃないです、オノレとおんなじホモサピエンスとは到底思えません…美しすぎる、清らかすぎる、透明すぎる、愛らしすぎる、あれは断じて人間じゃーありません!
姿も声も、妖精か天女か(どっちも見たこと無いけど!)という崇高さ…。
演じている時も、カーテンコールで現れた時も、彼女はプリズムのように光を集めキラキラと乱反射していた。
それだけでも観る価値があるというもの!

贅沢なことにそれだけじゃないのだ、この作品は…輝くプリズムを内包する虹の絹糸もあれば暗闇に沈みゆく清算できない淵もあり、劇中劇の主体がどちらであったのかを不明にさせる混沌たる神代と黄泉の世界があり、足踏みミシンや味噌カツがあり(これは観た人にしか通じない、スミマセン)、言霊の炎と滝とがあり、米国があり追随する日本があり南北朝鮮があり、銭湯の番台にたとえられる天皇の戦争責任があり…。
ああせめてもう一度!いまひとたびの逢瀬を!蒸気を!ノダさま〜っ!!

劇作家・演出家としての野田秀樹もさることながら俳優としての彼も非常に魅力的だ。
去り婆(なんたる変換だ、確かに婆ぁなんだが、いやそうじゃなくて)…野田が演ずるサリババ先生の面白いの面白くないのって!
新選組!における勝海舟もそうだが、あのキャラクターは余人に代え難い。
軽いかと思えば重く、浅いかと思えば深い。
まるで禅問答のようなキャラクターだ。

宮沢・アフロディーテ・りえと野田・ゼウス・秀樹のハザマでさしものサダヲちゃんもやや霞みがちだったような…いえ、大変にキュートではあったけれども。

ああまだるっかしい。
語りたいことは他にもあるのに言葉にできない。
だからきっと、私は今後ずっと野田作品を切望していくのだろうな。
そして観るたびに解らないことの多さに自分の不勉強を嘆き、隠喩のすべてを感じ取ろうともがくんだろうな。
嘆くとかもがくとか、非常に苦行のような言葉だがそうではなく。
だって時間を忘れる楽しさがありましたから!とにかく観たい!もっともっと観たい!
出会わせてくれたスマ友に感謝。ついでにスマにも感謝!
(今日もまたそこに帰結してしまったでおじゃる…。)