追悼

7月には中島らも氏が。
8月に入っては渡辺文雄氏とアンリ・カルティエブレッソン氏が亡くなった。

なんの脈絡もないお三方で享年も亡くなり方もまったく異なるのだが、どのお方にも(種類は違えど)不思議な親近感を一方的に覚えていた私はそれぞれに哀しく死を悼んだ。

らもさんは筋金入りの酒飲みだったそうな。
私がらもさんの本を読んでいるのを知って、当時の上司が「あれはものすごい酒乱だぞ」と教えてくれたがだからといって本の面白さは減るものでもなく。
上司はとある飲み屋で酔っぱらったらもさんに絡まれたことがあると言っていた。
(その上司もかなりの飲兵衛で定時を過ぎれば私の飲み友達だったのだけど。)
大酒飲んで階段を踏み外すなんて。酒飲みらしい最期。まるで芹沢鴨の瓢箪。痛々しいのに妙に坐りのいい最期で。
文章のそこここに溢れる彼のユーモアが大好きだった。

渡辺文雄さんといえば連想ゲームだ。
子供の頃この番組は我が家の定番だったからここに出演していた人達はあの頃のイメージのまま私の中に留まっている。
浴衣で縁側、うちわにビールが似合いそうな貫禄のあるお父さんのイメージ、それが渡辺さん。
昔よく声をかけてくれた近所のおじさんが亡くなってしまったような感覚がある。

アンリ・カルティエブレッソン
この人の写真を昔、庭園美術館で見た。
忘れもしないアジェとカルティエブレッソン展、88年。
一緒に見た人の手元にもまだ残っているだろうか、あの写真集は。
夏草の庭園とひんやりした美術館のにおい、アールデコな建物に溶けこんでいたモノクロームの写真たち。
大往生の写真家の思い出はあの風景と共にずっと生き続けるだろう。

そして59年前の今日は広島に原爆が落ちた日。
朝、市役所からのサイレンが聞こえたので黙祷をした。
ドラにも簡単に説明をした。
「もう戦争がおきませんように」と一緒に手を合わせたドラの、そして大多数の世界の人々の祈りがいつか叶えられますように。