「赤鬼」を観た その1

10月某日シアターコクーンにて「赤鬼・日本バージョン」を観た。
作・演出:野田秀樹、出演:野田秀樹小西真奈美大倉孝二ヨハネス・フラッシュバーガー。
この作品にはロンドンver.タイver.もありそれぞれ言語も衣装も舞台装置も出演者数もすべて異なっている。
残念ながら日本ver.しか観られなかったので他との比較はできないが、出演者4人が一人何役もこなす日本版の演出は非常に面白かった。

と冷静を装って書いているが、実は芝居が始まってすぐに平常心を失ってしまい…まともな感想は書けないことをお許しいただきたく…(別に断らなくてもまともな感想なんて書けた試しがないが)。

この日の座席は舞台かぶりつき一列目で、迫力満点なんて言葉では足りないくらいの臨場感と一体感が味わえた。
相撲の土俵のようにコクーンの真ん中に設えられた、ひょうたん型でシンプルな白くごく低い舞台。そのぐるりには色とりどりのガラス瓶。
そこから1mと離れていない場所にこれまた背の低い椅子が客席として配置されていた。

役者さん達は舞台上だけに留まらずその狭い通路も全速力でかけまわったり転がったり。
客席も含めて芝居空間であり、客も芝居に組み込まれていく感覚だ。

大倉さんを「河合だー」と思ったり小西さんを見て「ちゅらさん」を連想したりしたのはほんの一瞬で、すぐに赤鬼の世界へと引きずり込まれていった。
野田さん演ずる「とんび」(少し頭の弱い男で、小西さん演ずる「あの女」の兄役)に見入っていたら、なんということだ!

私の手を取っている!
とんびが!
つまり野田秀樹が!
大河でいうと勝海舟が!
いや、今はとんびなんだけど!
でもやっぱり同時に野田秀樹でもあり!
うわぁ!うわぁ!
なにがおこったのー!

舞台の上では大倉さん演ずる「水銀(ミズガネ)」がそれを見て「オマエなに手なんか握ってんだよ」とか言っている!
えええー!
私の真横にひざまずいて紛れもなくこの手を握っているのはとんび!
どっ、どうしたらいいのっ!
野田さんに手を握られて嬉しいけどとんびは村人に疎んじられているんだからこんな上気した顔してちゃイケナイかも!でもどうしようもない!わたし女優じゃないし!

なんて目まぐるしくショーモナイコトを考えているうちに野田とんびは行ってしまわれた。
のっけからそんなことがあって、平静でなんかいられるわけがない。

続く