「赤鬼」を観た その2

赤鬼感想がなかなか書けずにいるうちに11月だ、ううむ。
ところで先日「特別な二人」という深夜番組にて中村勘九郎野田秀樹対談が見られた。
素晴らしく面白かった!
「決戦!油小路」と抱き合わせでRAM保存だ、ああ歌舞伎というものも観てみたいぞなもし…いや、歌舞伎全般にも興味はあるが今は何よりもこの二人が組んで作り上げる世界に触れてみたい。来年の勘三郎襲名公演…是が非でも!

さて少しでも記憶が鮮明なうちに少しでも感想をば。

とある海辺の村に、異国の男が打ち上げられた。
言葉も通じず異形の彼は村人たちをパニックに陥れ「赤鬼」として恐れられる。
よそ者である「あの女」だけが赤鬼と心を通わせることとなるが、それによって彼女も赤鬼と共に村人たちから処刑されそうになってしまう。
「水銀」と「とんび」が彼らを救出し、4人で「海の向こう」を目指して漕ぎ出して行くが…。

ざっとしたあらすじはこうである。
この物語は「赤鬼」が象徴する‘異なるもの’と対峙したとき人がそれをどう受け止め、或いは拒絶していくのかをテーマとしている。
それは単に異文化とか異言語といった問題だけでなく、少数派であったり「よくわからないもの」との関わりすべてを含んでいるのだろう。

だから、自分の中に潜む赤鬼的なるものと村人の要素を見つめながらこの作品に吸い込まれて行ってしまうのだ。
小さな赤鬼だった頃に「この向こうにあるもの」を信じていたことや、なんとか溶けこんだ場所を確保するため多少なりとも排他的になってしまった村人経験がオーバーラップしてくる。
あとこれは個人的な感覚だろうが、赤鬼の風貌が拘束されたフセイン元大統領を彷彿とさせたり佐川クン事件を思い出したり母性の本質を考えたり…いくらでも連想ゲームができてしまう。
内包するものは重いけれど、テンポはいいし台詞はキレよく面白い(そして奥深い)し、常に動きのある舞台でまったく中だるみというものがない。笑いもふんだんに盛りこまれてあっという間の2時間だった。

野田作品は海のようだ、と思う。

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イラクで香田さんが亡くなった。
何をしたかったのか、何を見たかったのか。
彼の口からはもう語られることがない。
少なくとも彼は赤鬼になることを厭わなかった青年なのに。

無謀であってもテロ(そして戦争)で殺されていいはずはない。
やりきれない。