バターご飯(今日はなぜか怒涛の更新)

昔々私が小学生だったころ。
一人のいじめられっこがクラスにいた。

『あーみちゃん』の何がそんなにいじめの対象になったのか。
いつもフケがいっぱいだった頭髪か。
なんとなく薄汚れた服装か。

ただそのころのいじめは現在とは恐らく本質的に違って「いじめても友達」だった気がする。
あーみちゃんは、いじめられても黙るタイプではなくていつもくってかかっていた。
いじめる子達もそれを無視はしなかった。
具体的にどんないじめだったのかはよく覚えていないが(私はそのころ何につけても蚊帳の外だった…いつもひとりで窓の外を眺めているような子だったから)、「ブース」とか「バーカ」とか男子がからかい、「汚いよね」と女子が囁いていた…ような気がする。

あーみちゃんは「何が汚いと?」「バカやないもん、あんたらのほうがバカやろーが」といつも精一杯応酬していたと思う。
私はそんなやりとりをぼーっと聞きながら、転校してきてからいつまでたってもクラスに溶け込めない自分のほうがあーみちゃんよりもひとりぼっちだよなぁと感じていた。

あるとき、強気のあーみちゃんが珍しく言葉で言い返さず冬の教室の曇ったガラス窓に自分の気持ちを指で書いたことがあった。

「差別」

一瞬教室が静まった。
さすがにいじめっこたちも良心が痛んだのだろう。
しかし次の瞬間誰かが言った。

「あーみちゃん、それ字が間違っとうよ!」

差別の差の字が左、になっていた。

クラスがどっと沸いた。
あーみちゃんも一緒に笑っていた。

やっぱりあーみちゃんの方がみんなと仲良しだよな、と私は思った。

なんだこのエッセイまがいの文章は。
何が書きたかったのかというと昨日の黒バラで中居さんが作っていた「バターご飯」のことだ。
いじめられっこのあーみちゃんが「うちではバターご飯を食べる!美味しいとよ!」と胸を張っていたメニュー。
クラスメートたちがのけぞって「うぇぇ気持ちわるかー!」と言っていたメニュー。

結構美味しそうだな、と思いながら黒バラを見ていた。
そしてあーみちゃんのことを思い出したのだ。

どうしているんだろうかあーみちゃん。
肝っ玉かーさんになってお子さんにバターご飯を食べさせているかもしれないな。

ほかのクラスメートのことはあまり覚えていない。
きっと私もあまり覚えてもらっていないだろう。
多分あーみちゃんの一人勝ちだ。