キレイを観た その2

(その1からの続き)

偽善や欲望や偽りに縁取られた現実も、そこを生きていくためにケガレてしまった己も全てをひっくるめて許してくれる懐の深さがラストシーンで際立つ。

松尾スズキはそんな温かい気持ちやら前向きなメッセージやらが気恥ずかしくて、笑いの要素もたっぷりなミュージカル仕立てにしたんだろうな。
どんなに上手に隠しても可愛いアンヨが見えてるよ…と泣きながら歌いたくなっちまうわけで。

印象的でツボな場面は多すぎて枚挙に暇がないが…。
ダイズ丸(橋本じゅんステキー!)の歌う「調味料はいりません〜♪」とか、ヘヴィメンスシスターズのカッチョイ〜ヘビメタとか、カネコキネコ(片桐はいりやっぱりラブ!)の歌い踊るサルサとか。
ハリコナB(IQ160時代)の女装(岡本健一・その美脚)、カスミさんの凛として筋の通った偽善っぷり(秋山奈津子・その哀愁漂う滑らかな裸体)、ハリコナA(バカ時代)を演じるサダヲちゃんの弾けっぷり(隣席の友人が途中でチューされましたがな!キャー☆)、ケガレとミサの可愛らしさ・美しさ。

蘭々も高岡早紀もどちらかといえば苦手な女優さん(というよりも芸能人)だったのに、彼女達の頑張り(特に蘭々は急病で降板した酒井若菜の代役として突然の抜擢だった)そして舞台上で放つ特別なオーラには感服した。

それから、九州の地名や方言がかなり出てきたのは妙に懐かしく嬉しかった。
松尾スズキは福岡の人なのでその影響なのだろう。
そして表面上は出てこないけれども、ひょっとすると隠されたテーマのひとつかなと感じたのは差別の問題。
ここにも九州という土地柄が深く関わってくるのだが、まぁそれは無意識に近い部分で感じ取ればいいのかもしれない。感じなくてもいいのかもしれない。

とにもかくにも。
「ケガレてケガレて私はキレイ」

このラストの歌詞に集約されていると思う。
思わず泣けてしまったのは自分自身がたっぷりケガレているから。
出家とその弟子」を読んだときと同じ赦しを感じて無性に有難かったから。
こんな作品を生み出してくれた松尾スズキが神様に思えた。
一緒にこの舞台を観ようと誘ってくれた友人たちも神様に思えた。

「キレイ」を観られて本当に良かった。
(なのに感想がこんなに遅くなってごめんなさい松尾スズキー!って、謝ること自体すっとこどっこいな行為ですがそんな気分。)