「12人の優しい日本人」を観た その1

なぜパルコ劇場。
三谷作品を観たいと願う人間はよーけおるとですよ、キャパが狭すぎまっせ?
ついでに来年3月の三谷幸喜初歌舞伎書き下ろし作品「決闘!高田馬場」もパルコ劇場だ、またまたチケット争奪戦は熾烈を極めるはず。

今回のチケットを手に入れることができたのは、まさに強運としか言いようがないかもしれない。
有名な初期三谷作品である上に豪華なキャスト(浅野和之石田ゆり子・伊藤正之・江口洋介小日向文世鈴木砂羽筒井道隆生瀬勝久温水洋一堀内敬子堀部圭亮山寺宏一)。

そりゃー観たいでしょう、チケット入手したいでしょう!
某オークションでは一枚ウン万円という金額が提示されていた。
よくぞ観られたものだ…というのが今の実感。

10年程前に私はビデオでこの映画版を見たことがあり、細部は忘れていてもどんなに面白い作品であるかはしっかりと覚えていた。
(大体これまでミタニンが手がけたものでつまらないと思ったものなどひとつもないのだが。)

しかし生の舞台ときたら。
面白さも吸引力も迫力も緊張感も格段。
場面転換は一度もなく音楽もラストにしか流れない純粋な一幕劇なので、すべては脚本とそれを立体化する役者の力量に懸かっている。

2時間喋りっぱなしの役者さんたち。
12人それぞれが「あ〜こういう人いるよなぁ」と思わせてくれるいいキャラクターで、「欠点だらけなのに憎めない」人々になりきってそこに立っておられた。
そして観ているこちらは誰に近いのか自然に考えさせられてしまう。
そうやって自分もすぅっと舞台に取り込まれていくのだ。
自分ならどうするか。どう考えるか。どう発言するか。或いはしないのか。

一人の人間の中に真面目な部分といい加減な部分が混在すること、テンションが上がったり下がったりすること、愚かしくて不純な考えも抱くのに時として凛と気高くもなりうること、強く見えても弱いこと、弱く見えても強いこと…そんな様々な要素があることをいつも三谷作品は思い出させてくれる。

時事ネタ(アネハとか琴欧州とか愛・地球博とか)を巧みに織り込んで現代に無理なく蘇ったこの作品は、笑いの連続であるがそれだけには留まらない。
それは今まさに「陪審員制度」が日本にまもなく導入されるという事実があるからであると同時に、こうした三谷作品に共通する人間の描き方によるところも大きいと思う。

続く