スミコの妄想天国 その1

すま家のおとーさんは、年末に馬券を買って家族(妻一人・子供三人)と一緒にテレビで有馬記念を見るのを楽しみにしている。
野球について語り始めると暴走するので、家族(特に妻)からはやや引き気味で見つめられることもしばしば。
馬券以外にも消火器やらスーツやら、何くれと無く家族に(たまにありがたメイワクな)プレゼントをする癖がある。
家族の嬉しそうな顔が何よりも好きなのだろう。

末っ子はおとーさんをからかう天才で、流行りモノや機械などに疎いおとーさんにそういった物事を説明するときには『野球に喩えたらわかるンでしょ?』などと憎たらしいことを言う。
だからおとーさんは(目に入れても痛くないくせに)たまに末っ子にお仕置きをしたくなってしまう。
おかーさんの機嫌を良くする天才でもある末っ子は、困ったことがあるとおかーさんの後ろに隠れて身を守る。

おかーさんはとても社交的だ。
とっつき難いと思われがちだが、18万人に声をかけられると(それが不本意な呼ばれ方であっても)満面の笑みで手を振ったりする。
美人で料理上手でおまけにセクシーで、子供達の自慢の母だが話がまわりくどくてよくわからない喩えを乱発するのが玉にキズ。
ただし、夫はいつでも妻の言わんとするところを誰よりも正確に理解して周囲にさりげなく通訳する。

上の子はクールで知的なイメージだったのだが最近脱皮して(おかーさん談)、その天然っぷりを遺憾無く発揮しはじめ、益々魅力的な娘になった。(娘?)
至極端整な顔立ちなのに、笑うとたまに座布団運びの山田くんに見えるという摩訶不思議さも持ち合わせている。
おとーさんはつきあい方がわからないなどと言いつつ、このキュートな娘にチョッカイを出したくて仕方がない。
おかーさんはこの気の合う娘とよく一緒にお買い物に行く。誠に美しい母娘である。

真ん中の子は勤勉で謙虚、真面目で誠実なお人柄(皇室の婚約発表ではない)。
ピントのずれた会話にも一般参加な沈黙マンぶりにも、家族は呆れツッコミつつ癒されている。
家族のオアシス、と思いきや突然毒を吐くこともあるので油断はできない。
深酒して羽目を外し、おかーさんに大目玉を食らうことも(だからこの子はちょっとおかーさんがコワイ)。
おとーさんはこの子と一緒に飲むと、真夜中過ぎに何故か色っぽく「ツヨポン」と呼びかけてくる。誠に仲の良き父と息子である。

続く