ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?を観た 1

(ネタばれだらけです、ご注意を!)

18日、シアターコクーンにて。
ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出による「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?」(マチネ)を観る機会に恵まれた。
出演は大竹しのぶ段田安則稲垣吾郎ともさかりえ

原作は未読だがアメリカ人劇作家エドワード・オルビーの代表作だとか。
舞台を観ながら「ガラスの動物園」や「欲望という名の電車」(ともにテネシー・ウィリアムズ)を思い出した。
両作とも大学時代に一部を原文で読み、翻訳は通読したし映画も観た。
ドロドロと重苦しく、湿度が高く風のない熱帯夜のような後味が残っている。

今回の舞台も同じように、暑苦しくて不快で逃げ出したくなるような印象。
物語冒頭、パーティから酔って帰宅した中年の夫婦が登場しエキセントリックな妻は夫を責め立てる。
散らかった部屋、破綻した夫婦関係、アルコールの性悪な部分だけが浮き上がる空間で二人は不毛で口汚い言葉を紡ぎ続ける。

私は人が争う姿を見るのがとても嫌いなので(好きな人はいないだろうが)、この時点で既にグッタリ。
だって物凄く巧いのだ、大竹さんも段田さんも。
疲れて絶望していておかしくなっている妻マーサと、振り回されてすでに振り切れそうな夫ジョージ。

一幕目、このジョージの気持ちが自分でも驚くほどに浸透してきた。
深夜2時を過ぎているのに突然「今から客がくる」と宣言する妻。
さんざん自分を悪し様に言っていたくせに下卑た風情で「キスをして」とせがむ妻。
妻のすべての言動が夫の心を逆撫でイライラさせ落胆させる。

ああジョージ、たまらんよねジョージ!
…と思っていた私は甘かった。

二幕、三幕と進むにつれマーサよりもむしろジョージの方に根深いドロドロが潜んでいる、いや潜むというよりドロドロにまみれているのではないか?と恐ろしくなるのだ。
とにかく段田さんが巧すぎる。
あの大竹しのぶを相手にがっぷり四つ相撲、決して力業ではなく試合巧者と称えたくなる芝居っぷり。
それだけで正直、おなかいっぱい。
成熟した役者さんのいいお芝居が観られました…というのが一番の感想。

そのほかの感想は徒然に。

吾郎ちゃんが演じていたニックという役は、若くスマートな生物の助教授。
妻ハネー役のともさかりえともども、段田&大竹ペアとは対照的に初々しく好ましい夫婦として登場する。

続く