ヴァージニア・ウルフなんかこわくない?を観た 2
(24日付けからの続き)
ところが徐々にこのニックもハネーも、一筋縄では行かない男女であることが判明してくる。
爽やかな好青年に見えて野心が旺盛で、出世のためならば「上司の奥様方」と‘寝る’ことも厭わないニック。
世間知らずで明るい妻かと思いきや、新興宗教の教祖である父の黒い影に怯えて育ち心の病を抱えているハネー。
それぞれの生い立ちや欲望や思考回路が、ジョージの言うところの「ゲーム」によって暴かれていく。
マーサもジョージも(あまり明確にはされないが)育った家庭の歪みに加えて、夫婦となってからの年月…特に‘息子’をめぐる出来事が二人に与えたダメージは計り知れず、口を開けば罵詈雑言の応酬…その口を閉ざすために飲んでいるのか?と思えるほどのアルコール依存に陥り、酒は事態をもっと悪化させるばかり。
まぁ兎にも角にも4人は舞台上で飲んでばかりいる。
ニ幕では誰も冷静な判断などできなくなり、最悪の方向へと転げ落ちていくのを止める術もない。
マーサとニックは情事へと走り、ジョージはあろうことかそれを推奨し、ハネーは吐き続ける。
人が触れられたくない部分に情け容赦なく踏み込んでいくジョージ。
こんな場所には絶対に居たくないと思わせる醜悪かつ冷徹なやり口に、こっちもなんか強いやつをストレートで飲ませろ!と言いたくなる。
ホントに凄いよ段田さん…。
そして第三幕。
‘息子’についての真実が暴露される。
愁嘆場と修羅場のあとに訪れるのは、ようやく本質に向き合うこととなった傷だらけの中年夫婦に差し込む朝の光。
その場を去り行く若い夫婦にも鈍い変化は感じられる。
ラストシーンで救いを見出せるので、この作品の後味は悪くない。
悪くないが疲れる。
マーサとジョージにはあんなやり方しか無かったのだろうか?という疑問も残る。
ジョージの過去はどこまでが現実なのかハッキリしない部分もあるし、他の3人に比べてニックの背景が描きこまれていないのもやや気になる。
でも不思議と4人のバランスは良かった。
ひたすら濃いマーサ&ジョージ、冴えない若い女ハネー、うっとりするほど姿の良い(だけど人間的には浅い)ニック。
それぞれの役者さんたちは非常に役柄に溶け込んでおられた。
吾郎ちゃんの白いシャツ姿、綺麗だったなぁ。
大竹さんの黒インナーに赤いシャツってのも刺激的だったなぁ。
もうちょっとだけ続く