吾輩は悩んでいる その2

息子はみるみる元気を取り戻してきたというのに、今度は吾輩がおかしなことになってきてしまったのだ。

冷や汗が出る。
気分が物凄く悪い。
しかも腹まで強烈に痛む。

最早一刻も猶予がならない、息子よしばらくそこで待て!と言い聞かせ、病院のトイレへ駆け込んだ。
いやはや、尾篭な話で本当に申し訳ないが…これが上から下から大変な騒ぎであった。

苦しい、こんなに苦しいのはいつ以来だろうか…と狭い空間で考えつつ早く息子の側に戻ってやらねば、という焦りの気持ちとあいまって心身ともにほとほと参った。
誰かお助けを!と思わず祈ったりもしたのであるが。

その時ふと気付いたのである。
息子が吐き、吾輩もかように悲惨な状態であるということは。
それは食事が原因なのではないだろうか?

ああなんたること、恐らく朝のカレーがいけなかったに間違いない!
二日前の野菜カレーを、朝晩火にはかけていたのだけれどもこの蒸し暑い季節だ、用心してすぐさま冷凍しなかった吾輩の大失敗だ!

息子の側に戻りすぐさま詫びた。
母が注意を怠ってしまった、申し訳ない!
謝りながらまた何回もトイレへと駆け込む吾輩を、息子はあっけにとられて見つめていた。

息子を診てもらえる順番がやっと巡ってきた。
すでに息子は快復している。
その横で青い顔をしているのは吾輩である。

事情をかいつまんで話すとS医師は言った。
「そうですね、風邪でもなさそうですから…食あたりでしょう。お母さん、大丈夫ですか?」

全然大丈夫じゃありません!などという泣き言は言えまい、なにしろまたしても自業自得なのである。
とにかく息子が元気に戻ってくれたことが心の支えなのである。

「じゃ、息子さんには吐き気止めを。おなかは下さなかったんですよね?」
「はい、息子は胃の中が空っぽになって良くなったようです、下痢もしておりません」
「そうですか、それじゃお母さんには念のためこの薬を出しておきますから、お大事にしてください」

頂いたのは吐き気止めと胃腸薬。すべてお見通しである。

家に戻るなり息子は「おなかすいたー!」と訴える。
正直言ってすぐにでも横たわりたい体調であったが、吾輩がやらねば誰がやる。

大事をとって梅粥など食べさせたところが限界であった。
布団に倒れこみ、2時間後に目が覚めた。
息子は大人しく本など読んでいたようだ。
有難い。

つづく