青山劇場で「キャバレー」を観た その1

演出:松尾スズキ、出演:松雪泰子阿部サダヲ森山未來小松和重村杉蝉之介平岩紙秋山菜津子

かの有名なるミュージカル「キャバレー」の松尾スズキ版を、昨日青山劇場にて観ることができた。
楽日(マチネだけど)、しかもかなりの良席でたっぷり非日常を堪能できて幸せ…。

恥ずかしながら私は今まで一度も(映画でも舞台でも)この作品を観た事がなく、ほとんど予備知識ゼロ(強いて言えば映画版の主演がライザ・ミネリだったことと彼女の歌うテーマソングを聴いたことがある程度)の状態で観てしまった。
そのためこの猥雑で華やかで賑やかな舞台の核となっているものが、ナチスドイツによるユダヤ人迫害であったということをまるで知らなかった。
いやほんとに、お恥ずかしい限りで…。
しかしまっさらな状態で観たからこその感想もあると開き直り?、恥の上塗りレポートでも書いてみようかと思った次第でおじゃる。

上質のエンターテインメントなので観終わったあと「面白かったぁ!」と心底思ったが、面白い=愉快に笑っておしまい…という種類のものではなく、重いテーマを楔のようにドーンと打ち込んでおいて、「人生はキャバレー」と歌い踊り笑い飛ばす豪快さやら器の大きさやら良い意味でのいい加減さやらに惚れ惚れとさせてもらった…という面白さ。

キャストにも惚れた。
貫禄の秋山奈津子さんはこれまでも幾度となく舞台で拝見したが、今回が一番痺れた。
台詞も動きも歌も完璧なのは勿論のこと、コミカルな老婦人である大家さんというキャラクターを存分に楽しんでおられる様子が素晴らしかった。

その大家さんに求婚する老ユダヤ人・シュルツを演じた小松和重さんがまた…ずるいっすよ!と言いたくなるほど達者で飄々としていて、多くは語らないシリアスな場面では全身から喜怒哀楽が伝わってきた。

キャバレーのMCは愛するサダヲちゃんだし、蝉乃介に紙ちゃんという大人計画の役者さんたちもほんっとにフィールドを広げたんだなぁ…と何故か身勝手な身内目線で嬉しくなった。

主役の松雪さんは、想像以上に歌がうまくてTVでみるより更にスリムでお綺麗だった…が、なにか物足りなかった気がする…と芝居後友人と語らった。
凄く頑張ってたし悪くはなかった、しかし彼女はサリーではなく松雪さんだったかな、というのがその場で出た結論。

その2へ続く