「キル」を観た その1
野田MAP第13回公演「キル」(作・演出=野田秀樹)、シアターコクーン。
キャストは妻夫木聡、広末涼子、勝村政信、高田聖子、山田まりや、村岡希美、市川しんぺー、中山祐一朗、小林勝也、高橋恵子、野田秀樹。
物語はジンギスカンの侵略という史実をベースにファッション業界の攻防を描いていると見せかけながら、夢と現実・過去と未来が入り乱れ時空が撹乱されるという、野田秀樹ならではの何層にも重なるメッセージが交響曲のように溢れかえる作品であった。
何しろ舞台が美しい。
モンゴルの草原や壮大な空を喚起させる青、蒼、緑、翠、紅、生成り、純白、クリーム、ベージュ、灰、黄土、漆黒…の布と光が舞台装置としても衣装としても効果的に使われている。
NHKの番組・シルクロードを彷彿とさせるような雄大で伸びやかな音楽も素晴らしかった。
複雑なストーリーではあるが、あれこれ考えなくとも舞台芸術を純粋に楽しめる作品だと思う。
言葉遊びがふんだんで(タイトルの「キル」からして着る・切る・斬る・伐る・KILLといった具合にいかようにも受け止められる仕掛けになっている…日本語って便利で曖昧で奥が深くて面白い)、役者の方々も魅力的で、しかも今回は前から2列目ど真ん中という極上席での観劇だったので、全体を見渡しての感想というよりもピンポイントで印象に残ったことを書き残すこととする。
主役の二人(妻ブッキーとヒロスエ)は、頑張って役に取り組んではいたが正直言って未熟さを感じた。
特に妻ブッキーがなぁ…物凄く肌がきめ細かくて(至近距離から両目1.5以上の私が見てもツルンツルン!)、程良い筋肉がついた剥き出しの二の腕にもウットリしたけど(何を見に行っとるんじゃ!)、顔立ちが甘すぎるのでテムジンという主人公の持つ残忍さや粗暴さが浮き彫りにならず、父子の相克を息子側から描く側面はともかく、父側から表現する場面は殆ど説得力がなかった…そしてそれは顔立ちのせいだけではない…なんてボロクソないいようでごめんねブッキー。
初演・再演のテムジンは堤真一だったと聞けば、比較するのは酷と知りつつ「これを堤さんで観たかった」と思ってしまったわけで。
ただ、母親トワ(高橋恵子)とのシーンは彼の良さ(硝子の少年みーたいなー♪少年性)が
発揮されていたと思う…なんてほんとエラソウでごめんねブッキー。
続く