さよならだけが人生だ その2

・「歓喜の歌」(映画)感想

立川志の輔師匠の創作落語を映画化した作品。
このところ落語が気になってしょうがないのと、主演の小林薫が大好きなので、いつか観られれば…くらいに思っていたところ、ひょんなきっかけで好機到来。
実に実に、小林薫が良かった。
いい加減でやる気がなくてだらしない中年の役なのに、なんであんなにイイんだろうか。
その夫を冷たーく見放している妻を、浅田美代子がこれまた好演。
マドンナ的存在の安田成美(型破りの夫を支える出来すぎた妻の役)がいて、その対比も面白い。
ストーリーは、大晦日に二つの女性コーラスグループが同じ会場をダブルブッキング、さてどうするどうなる…というもの。
ロマンスでもサスペンスでもミステリーでもないが、随所に可笑しみと歌声が溢れている。
クスクス笑って気楽に心を開け放っているところに、すーっと沁みてくる歌がもう…。

・「エリザベス ゴールデン・エイジ」(映画)

本当は「陰日向に咲く」を観るつもりだったのだ、パルコの映画館で使えるタダ券があったから。
しかし時間が合わず、行きがかり上?こちらを観ることに。
衣装も風景も豪華壮麗で大作(金かかってるぞー!という意味)なんだが。
すいません、私はこういう映画の良さがわからない…って身も蓋もない。
女帝の孤独とか、激動の中世とか、拷問と処刑とか、感ずるところは多々あったがとどのつまりは「自分が好きな作品じゃない」ということだ。
ほんとすいません。

・「しゃべれどもしゃべれども」(文庫本)

佐藤多佳子さんの本は二冊目(「黄色い目の魚」以来)で、去年だったか映画化されたこの作品はずっと気になっていた。
予想に違わず…いや予想よりずっと面白かった。
黄色い目…もそうだったが、登場人物が皆とてもいい。
くせのある人ばかりなのに最終的には全員好きになってしまう。
この人の作品は他のもの是非読みたい。

・「乳と卵」(文芸春秋

今年の芥川賞受賞作。
いわんとすることはわかる、と言い切ってしまうのは傲慢だとは思うがなんというか…ううーん、女の性(セイでもありサガでもある)やら母子関係の息苦しさやら、目新しさはないものの引力のあるテーマを、関西弁のだらだら長文(樋口一葉へのオマージュらしい)で意外とテンポ良く書いている巧さは感じるのだが、と私もだらだら長文で否定的ニュアンスを醸し出したか。