追悼
緒形拳さんが亡くなった。
好きな役者さんは多いが、顔も声も佇まいも勿論演技もすべて好み…となるとそうはいない。
緒形さんを認識したのはNHK大河ドラマ「風と雲と虹と」が最初だと思う。
姉のブログをさっきのぞいたら同じことを書いていて小さく笑ったのだが、二人で夢中になって見ていたっけ。
それが76年というから、私はまだ10歳、姉も14歳だったのね…。
「風と雲と虹と」は平将門役の加藤剛さんが主役で、緒形さんは将門の親友・藤原純友を演じておられた。
加藤剛といえばザ・男前。
おそらく人生で初めて「これが男前」と感じた俳優さんかもしれない。
そしてこのドラマには若かりし草刈正雄さんも出演していた。
そりゃもうどえりゃーカッコよかった。
その愁いを満ちた瞳、神がかり的容姿端麗さ。
(姉と私は一瞬にして恋に落ちた。あの時の演技は大根だったけどね。そんなもの消して余りある美貌だったんだもの。ほほほ。)
加藤剛に草刈正雄という当時の二大美男だけにとどまらず、吉永小百合・真野響子・太地喜和子…ほか錚々たるメンバーが登場していたが、緒形さんの存在感は抜きん出ていた。
したたかで飄々としていながら骨太で、チャーミングで豪傑で迫力たっぷりで懐が深くて。
純友という役柄自体もそうであったのだろうが、緒形拳という役者本人の個性と表現力がそこに融合して、30年以上経過しても忘れられないものになっているのだと思う。
私にとってはあの藤原純友があってこそのギフトでありナニワ金融道だった。
ギフト(木村さんの父役)もナニワ(中居さんの上司役)も、緒形さんが演じたのは限りなく黒に近い怪しいキャラクターなのに、善悪を超えた人間的魅力と度量のどでかさが圧巻で。
木村さんとも中居さんとも、共演が嬉しくてならなかった。
この夏に放送された「帽子」もたまたま見ることができ、随分と痩せて白髪となり老人らしくなってしまったのだな…と少し淋しく思いながらも、変わらぬ笑顔とシャンと伸びた背筋に安心して作品を楽しんでいたのに。
それにしても5年もガンを患いながら人に察知させず、最後まできっちりと仕事をして、入院してすぐに(長く伏せることなく)亡くなるとは…。
あまりにもあまりにも、見事で感服してしまう。
結果的に遺作となってしまったフジのドラマは、緒形拳さんを偲んで丁寧に見ようと思う。
合掌。