母のこと(その17)

壺の蓋がそっと閉められ白布に包まれて私に手渡された。
これから斎場に戻って初七日の法要がある。
再び、お位牌を父が遺影を姉が、そしてお骨となった母を私が抱えて車に乗り込んだ。
白磁の壺はほかほかしていた。

火葬場まで来てくれた親戚も帰らねばならない時間となり、慌ただしくお見送りをする。
初七日の法要は、父と姉家族4人、我が家の3人だけが参加してお坊様のお経をいただく。

広い斎場の祭壇の前にはお坊様と8人の家族だけ。
8人は最前列に横並びで座ったから、2列目から後ろは誰もいない。
なのに、なんだか背後で人の気配がざわざわしている。
なんだろう?斎場の方が打ち合わせでもしているのかしら?と、お経の最中なのに気になって数回後ろを振り向く。
しかし見える範囲ではどなたもおられない。
気のせいか…と前を向いても、濃密な気配がある。
ううーん、なんか変なの…その時はそれだけしか感じなかった。

初七日の法要も終わりお坊様がお帰りになった。
身内だけで精進落としのお料理をいただく。

このとき、俄然元気を取り戻したのはUちゃんである。
朝から何も食べられず時間があれば横になってい休んでいたUちゃんが、急激に体力を回復し旺盛な食欲を見せてくれた。
一同でほっとする。
私もやっと食欲が湧いてきてお寿司がとても美味しく感じられた。
皆それぞれ緊張していたからな…16日からずっと張りつめていたもんな…お客様もいらしたし気持ちも混乱していたし。

お葬式がなんとか無事に終わった。
荷物をまとめ遺族控え室を片付け、父と姉と3人で父の家へ向かう。
間もなくして斎場のYさんが簡易な祭壇を作りにやってきてくれた。
コンパクトな木の台にお線香や蝋燭・リンに香炉に花立てなどを並べ、遺骨や遺影を置く場所には白布を敷いて下さった。

これだけ整然とやっていただいたのに申し訳なかったが、この日は姉宅にみんなで泊まろう…ということになり遺骨も一緒に車で移動。
もちろん遺影やお位牌やYさんがセットしてくれた仮祭壇も運ぶ(えらいこっちゃ)。

姉と二人、それらをまとめようとしたときまたしても不思議なことが。
木の台の上(蝋燭立ての近く)に、小さな透明のかたまりがある。
あらあらロウが垂れちゃった?と拭こうとした姉が首をかしげる

「ロウじゃないよ、これ水…」
「みず…?なんで?」

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