母のこと(その20)

その時は姉が母の言葉を代弁した。
「あ、今聞こえた!『どうせ味もわからんくせになんば言いおうと!』ってよ〜」
(どうせ味もわからないくせになにを言ってるのよ、の意)
(ものっすごく母が言いそうなセリフ、おほほほ)

わかった、父よ。
来年から私がゴディバを送ろう。
どうせ大将に毎年買っているのだ、ついでだ(ついでかっ)。
大将はこの話を聞いているときやたらニカニカしておった。
父と大将は全然似ていないと思っていたが…こんな共通点があったとは。

下らない話はさておき…(父よすまん)。

甥っ子Hくんと義兄が話してくれたことを。
姉が自分のブログに書いていたものを、ほぼそのまま転記させてもらうことにします。

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お通夜の夜って、弔問のお客様が大体帰られたあとも、祭壇のある部屋に母を一人にしておくことはできません。
(しばらくしたら控え室に連れて帰るのだけど、それまでの間)

家族は交代で母に付き添います。
長男(Uくん)が部屋を出て、次男(Hくん)が入れ替わりに入っていこうとしたとき…。

足を踏み入れた時、ふと温度がガラッと変わったそうです。
急に暖かくなったのだって。
「あれ?」と思って思わず立ち止まったとき、母の声が聞こえたそうです。
「楽しかった」…って。

正確にいうと聞こえたというより、前頭葉のあたりに「母の言葉」として浮かんだ感じらしいです。

そして、また別のひととき。
次男は夫と一緒に斎場で母の棺の横に立ちながら、静かに流れる曲を聴いていたそうです。
(生前母が気に入っていた平原綾香の「ノクターン」などです)

次男が母の顔を見て「みんな『安らかに眠っているみたい』というけど、オレにはそんな風には見えないよ」と言ったそうです。
ちょうど顔のところだけ覗き窓のように開けられた部分にポトリと涙を落として。

次男があわてて零した涙を手で拭いていると、今度は夫に聞こえてきたそうです。
「○○ちゃん、泣いてくれてうれしいけど、哀しまなくてもいいから」
「誰でも通る道だから泣かないで」
それも母の言葉として浮かんだそう…。

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うちの家族と違ってなんてノーブルな姉の家族…。
キャラの違いっすかね?

それにしても。

「楽しかった」

その母の言葉を、聞いてくれて、伝えてくれて、ありがとう、Hくん。

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