「海をゆく者」を観た

週末にパルコ劇場にて、渋い舞台を観る機会に恵まれたので感想をば。

劇作・脚本:コナー・マクファーソン、翻訳:小田島恒志、演出:栗山民也、出演:小日向文世/吉田鋼太郎/浅野和之/大谷亮介/平田満

50代の男優5人のみが出演する翻訳劇。
痺れた!
5人揃って間違いない演技をする人たちやけん間違いなかろうと思っとったけど、ほんなこて間違いなかったばい!(興奮すると博多弁が出るスミコ)

ストーリーは説明しないが(面倒くさいからだけじゃなく、そこを説明してもこの舞台の良さは伝わらないと思うので)、秀逸なブラックコメディである。
大酒飲みでだらしない男たちが騒いでわめいて喧嘩して、およそ素敵な要素なんて一つもない空間…のはずだったのに、最後には温かく清らかな気持ちすら味わわせてくれる作品だった。
(全体のトーンが)重いかと思えば軽妙な部分もあり、(とある人物は)冷徹かと思えばユーモラスでもあり、(一つのエピソードが)ただのネタかと思えば重要な伏線だったりもして、幅の広い、懐の深い、一筋縄ではいかないお芝居だった。
まるで中年のおっさん、そのもの…かもしれない。

あー面白かった!
この面白さはある程度年をとっていないとわからないんじゃないだろうか。
うんざりするような日常にも聖なるものが宿る。
どうしようもない人間にも慈愛はそそがれる。
舞台から伝わってくる‘体温’が胸に迫った。

脚本からして面白いし照明も音響も文句なしだし、演出も素晴らしい。
そして5人の役者さんが5人ともうますぎる!
小日向さん(ロックハート)の猫のような身のこなしや表情。
吉田さん(リチャード)の膨大なセリフ量に余裕で圧勝する力量。
浅野さん(アイヴァン)の可愛らしさ軽やかさズルっこさ。
大谷さん(ニッキー)の愛嬌と調子の良さとおっさんの色気。
平田さん(シャーキー)の苦悩に満ちた顔、静と動の切り替えの凄さ。

どれ一つが欠けても物足りない。
大袈裟かもしれないけど、奇跡的な5人の巡り合わせだった気がする。

アイルランドの凍てついた海をこの目でみたことがあるわけでもないのに、なぜだろうか…心にまざまざと浮かんだ。
凍てついた海は、ひとりじゃ越えられないもんな。

芝居後にちょっと酔っ払って、そんなことをこっそり思った。
(いつもながらワケワカメの感想ですいません!)