「ろくでなし啄木」を観た

三谷さん作・演出の舞台「ろくでなし啄木」を観た。
出演は藤原竜也中村勘太郎吹石一恵

(ネタばれ含みの感想です、ご注意をば!)

三谷幸喜生誕50周年企画の第一弾(笑)というこのお芝居、私にとっても今年の観劇第一弾となった。
思えば去年の初観劇はやはりミタニンのTALK LIKE SINGING(ターロウ)だったわけで、なんだかとても有難いなぁと思う。
(いや、ちゃんとお金は自分で払ってるけどね←なんの言い訳?)

なんで啄木なんだろう?と頭の片隅で思っていたことなどすっかり忘れて、熱い三人芝居を満喫した。

なんせ役者が三人とも巧い!
脚本も巧い!
舞台の作りも照明も衣装も文句ない!

これまで私が観た三谷作品の中では一番大人っぽいというか(笑)、生々しい部分のある作品だった気がする。

男女の三角関係が描かれているせいもあるが、もしかすると三人がほとんど「靴(その他履物)を履いていない」せいかも?

温泉宿でのシーンが大半を占めるから当然なんだけどね。
三谷さんは自分の書くドラマでも映画でもお芝居でも、俳優さんにできるだけ靴を履かせたい…と以前言っておられた(ような記憶がある)。
今回はパンフを買わなかったので、その点について何か言及なさっているのかどうか定かではない。
なんにしろ、やや隠微な香りもするところが三谷作品としては珍しいなと感じた。

勿論全体を通しての印象は三谷さんらしい笑いとペーソス、人を観る目の温かさに彩られている。
ちょっとした仕掛けや謎解きに加え、木更津キャッツアイを彷彿とさせるような手法もあって、三時間近いお芝居がダレることなく程よい緊張と弛緩で進められていくのは流石ミタニン!だと思った。

藤原くんと勘太郎(なんでかこの呼び方が自分としてはしっくりくる)の声の良さや動きの滑らかさ・芝居の巧さは以前にも体感していたが、今回が初舞台だという吹石さんは期待以上の素晴らしさであった。

映画「十三人の刺客」でも紅一点的な役どころで登場していた彼女。
「間違いない」俳優さんの一人であると実感した。
ろくでなしなのにどうしても憎めない啄木を演じた藤原くんも、無類のお人よしだけどどすの効いた核を秘めるテツを演じた勘太郎も、まったく間違いない。

「そんなの自分じゃない」と誰もが言いたいのかもしれん、と芝居後に飲んだ帰り道ふと思った。
今年ももがくぞ、と思った。