クラクラします
金曜夕方、ドラ(息子・仮名)の学校から電話があった。
「放課後に、下駄箱近くでドラくんが怪我をしまして…申し訳ありません!」
「はぁ、どんな具合なんでしょうか」
「友達と傘で遊んでいたようで、傘の先が目の下にあたってしまって…」
「はい…」
「出血してますし、とにかく傷が目の近く…目のすぐ下なのですぐに眼科に連れて行こうと思いますがよろしいでしょうか」
「もちろんです、お願いします!私もすぐに伺います!」
詳しい状況がまったくわからないまま、指定された眼科に急いだ。
到着したとき、まだドラは着いておらずとりあえずわかる部分だけ問診票を書いて待つ。
数分後、保健室の先生と教頭先生に連れられてドラ到着。
足取りはしっかりしている。
「大丈夫だよ、目は見えてる」
「そう…」
先生方お二人は平身低頭、何度も何度も謝罪なさる。
子供同士のことだし、しかもケンカのあげくの怪我などではなくふざけあっていて起きた事故らしいし、学校を責める気持ちなんてまったくないのに。
すぐに診察室に呼ばれ、眼科医のI先生に診ていただく。
負傷した左目を押さえていたガーゼをそっと取ると、はっきりと出血の跡が見て取れた。
しかも全体にかなり腫れているし傷口も生々しい(あまりの生々しさに直視できず腰が引けてしまったダメ母です…)。
I先生が「はぁ〜、随分強く当たったわね?これ…でも縫うとなると…うーん…」
どうやら傷口がスパッと切れずにグジャッとなっているようで(ひぇぇ!)、この状態で縫うとかえって跡が残るかもしれないとのこと。
「とりあえず血は止まってきてますから…傷口は少し様子をみましょう。それから肝心の目ですけど…うん、眼底は大丈夫みたいですね。」
この言葉に心底ほっとする。
「ただ虹彩に影響があるかどうかまだわかりませんので、明日またいらして下さい」
「ハイわかりました」
「では消毒しますね。少し痛いですよ…お母さんは見ない方がいいかもしれません」
隣の小部屋に連れて行かれ、ベッドに寝かされ消毒してもらっているドラに「がんばれ〜!」と念を送る。
ドラは気丈にも声もあげず泣きもせず痛みに耐えていた。
飲み薬と塗り薬、眼帯セットをもらってこの日は帰宅。
改めてドラに「何してたの、傘で」と聞いてみた。
「えー?時代劇の撮影ごっこみたいなやつ。俺がMくんの動きをよけられなかったからダメなんだよ」
「いや、そーゆーことじゃなくて…」
「可哀想になー、Mくん怒られてるんだろうな」
「うーん、とにかくどっちもどっちよ。傘で遊ぶのは危ないって前から言ってるじゃないの」
「へへへ」
「へへへじゃないってば。ドラも二年前に傘でYちゃんに怪我させたことあったでしょ?」
「うん…」
そうなのだ。
ドラ自身、以前ふざけていて持っていた傘が女の子の目の下に当たって学校から連絡がきたことがあったのだ。
あの時の気持ちはいまだに忘れられない。
女の子の顔に傷をつけてしまった!
どの程度の傷なのかもまったくわからず、数時間生きた心地がしなかった。
幸いその時はかすり傷程度で済み、ドラを連れてお詫びに行くとご両親とも気持ちの良い方ですぐに赦して下さったのだ。
今回、この事故の知らせを聞いたMくんの御両親がどんな心境になるか嫌と言うほどわかる。
Mくん本人もきっと動揺しているだろう。
傷ついたほうよりもむしろ傷つけたほうが辛い(ことが多いと思う)。
家に戻ってしばらくすると担任のK先生から電話が来た。
診察結果をお話しすると大分安心なさって、ドラとも少し言葉を交わした後再び電話に出ると「ちょっと泣きそうです…」と仰る。
そして「Mくんの親御さんがお詫びに行きたいと仰ってるんですが」とのことだった。
その必要はないけれど、そうしないと気が済まないのはよくよく理解できるので了解
の旨を伝えると「お父様も伺いたいそうですが」と!
えー!
そこまでなさらなくても…うちの中、散らかしっぱなしだし(そこかい!)
ともかく了解し、電話を切る。
慌てて玄関周りを片付けるダメ主婦スミコ。
そうこうするうち、玄関先にお客様の気配が…扉をあけるとネクタイ姿のお父さんに、きちんとしたスーツのお母さん、可哀想に小さく縮こまったMくんの姿があった。
大丈夫ですを繰り返すドラ&スミコ、本当にごめんなさいを繰り返すMくん一家…。
お詫びにと立派なバームクーヘンを頂いてしまった。
扉を閉めた途端、ドラがバームクーヘンを見て(片目で)ニンマリ。
「そんな、いいのにねぇ!」
「いいのにねぇって顔じゃないよドラ。美味しそう!やった!って顔してるよ」
「いひひひ」
まったくもって、ドラはこんなときにもドラなのであった。
ただ、元気そうにはしているが痛みも違和感もやはり多少はあるようで、熟睡できるのかそれが心配だった。
心配無用であった(笑)。
ドラ、この夜は10時間ノンストップ爆睡。
翌土曜、再び眼科へ。
眼帯を取ったI先生が「あらっ!」と驚嘆の声を。
「えー?すごい、綺麗になってる!」
「腫れは随分ひいたなと思っていたんですが」
「傷口がね、すごく綺麗になってるんです」
横から覗きこむと、昨日の悲惨さがまるで嘘のようであった!
「これはすごいですよ、やっぱり若さですね!すごい回復力!」
「本当ですね、自然治癒力?」
「そうです、凄いわー!」
凄い凄いと先生に言われ、ドラはどんどんドヤ顔になる(笑)。
「この調子なら眼帯もすぐに外せるかもしれません。片目だと危ないですからね…うん、眼底も虹彩も問題ないでしょう!」
「ありがとうございます!!」
「じゃあ来週月曜にもう一度来てください。薬はちゃんと飲んで下さいね、それで状態が良ければ眼帯を外して学校に行けるかもしれませんよ」
「ハイわかりました!」
大変良い方向への急展開にスキップ気分で帰宅。
担任のK先生からこの日も電話を頂き、経緯をお話すると受話器の向こうで小躍りせんばかりの喜びよう(なんて有難い!)。
とにかくドラは大丈夫なので、Mくんにこれ以上気にしないで元気を出してほしいと伝えていただくことにした。
土曜の夕方には、ドラの友達が5人もお見舞いに来てくれた。
手作りのクッキーや手紙を持って!
良い友達をもって良かったのぅ、ドラや…(突然おばーちゃん気分)。
そして翌日曜日には、なんと再びMくんとご両親がお見えになった。
(前触れがなかったため玄関は金曜より散らかっていた…なんでたった二日でこんなに散らかる我が家なの?←ダメ主婦のせいか…)
またしても正装(というのだろうか)の御両親、申し訳なさそうなMくん。
本当に大丈夫です、かえってすみません!いえ本当にすみません!と玄関をはさんで頭を下げ合う両家(といってもうちのオットは休日出勤で不在)。
挙句の果てに今度は大きなジュース詰め合わせを強引に置いて行かれた…。
そこまでなさらずとも…。
ドラはまたまたニンマリして「いいのに、ねぇ!」と口先だけで遠慮する。
なんにしても、おおごとにならずに良かった。
少し間違えばドラの肉体はもちろん、Mくんの心にも深い傷を負わせることになっていたかもしれない。
今朝、眼科のI先生に状態を診ていただいたところ「うわぁ本当によくなってる!これなら今日から眼帯を外せますよ」と太鼓判を押してもらった。
眠っているときに触らないよう、夜だけ眼帯をすることにしてあとは数日飲み薬と塗り薬でOKだそうだ。
視力も落ちておらず、両目とも1.5で異常なしとの診断。
「それにしても…」とI先生がポツリ。
「これね。本当に奇跡的なんですよ。目のすぐ下の、骨の上でしょう?これがちょっとでもずれていたら…あと数ミリずれていたら、眼球摘出だったかもしれないんです」
これには言葉を失った。
悪気はなくても、ただのふざけ合いでも、そんな事故は起こってしまうのだ。
恐ろしい!
今回はたまたま、ほんとうにたまたま運が良かったのだ。
不幸中の幸い、というべきなんだろうか。
傷跡は少し残るかもしれないけれど、それは形成外科でなんとかなる程度だという。
とにかく「目」そのものに影響がなかったのは天の恵みだと思う。
しかし。
これに懲りて、ちったぁ考えて遊んでくれよ小学生男子たち!
ドラを学校に送り届けると、ちょうど休み時間になったクラスメイトたちがわーっと駆け寄ってきてくれた。
担任のK先生も一緒になって大盛り上がりであった。
ホッとして帰宅。
ここ数日PCを開く気にもなれずにいたので、ちょっこし情報収集を…とパソコちゃんをあけてびっくり玉手箱。
なに?
なんなの、ファンミーティングって?
んんんーーー???
普通のライブは?
踊って歌ってキラキラのスマコンは、ないの?
ファンミって、なにすんの?
てゆーか、それには希望すれば参加できるもんなの?
ええとーーー。
もう、頭がまわりません。
ただでさえ「眼球摘出寸前だった」事実にクラクラしてたのに。
ぜんぜん違うクラクラだけど、こっちもクラクラだわよう。
スマに逢いたい。
5人に逢いたい。
でも例年以上に逢えるかどうか厳しいらしい…。
今はとりあえず祈るのみだ。
5人がすべてのイベント(北京含む)を元気に力強くやり遂げてくれることを。
そしてどんな内容であろうとキラキラしていてくれることを。
さらには。
願わくば。
スマを愛するヲタたち(憚りながら私含む)が、ちゃんとスマに逢えますように。
ああクラクラする…。