魔法のベランダ

かなりアンティークな我が家の、広くもないベランダには何故か来客が多い。

この春から初夏にかけては、鴨(芹沢さんと勝手に命名)がやってきた。
あとから調べてわかったのだが、これは非常に珍しい種類の「アカツクシガモ」であった…ユーラシア大陸に生息する、あまり生態なども知られていない鴨。
しかもチベット仏教でもスラヴ神話でも聖なる鳥として扱われているらしい。
そんな貴重な鴨さんが、どこがどう気に入ったのかわからんけどもしょっちゅうやってきては寛いだ挙句、産卵までしたのだから驚く。
(その顛末は4〜5月の愚日記に書いたので省くけど、当時はそこまで希少種だとは知りもせず…どこかほかでも産卵しただろうか芹沢さん…)

2年前の9月には、プランターのパセリでキアゲハが育った。
(このときはパセリくんと命名、幼虫が凄い勢いでパセリを食べ尽くし蛹になったもので。)
数時間かけて羽化し、元気よく巣立つところを観察し保護者気分炸裂。
まぁ、パセリが大好きなキアゲハなのでよそのお宅でもこんな程度のことはよくあることなのかもしれない。

蝶・野鳥…ときてお次は花である。
ドラ(息子・仮名)が下校途中で拾ってきたおしろい花の種を植えたプランターに、見慣れぬ葉がでてきたのに気づき「まぁええか」と適当に水やりしておいたら、いつの間にか美しい花を咲かせていた。
ピンクと白のコントラストが可愛らしい小花が、ひゅーっと伸びた茎を螺旋状に駆け上がるように並んでいるのである。
雑草かと思っていたがあまりに不思議な姿なのでちょいとネットで調べたら(雑草・螺旋、で検索)ヒット。
名前はネジバナ(或いはモジズリ)、雑草ではなくラン科の山野草であった。
よーーくみると、小さいながらも確かに花には蘭の風情がある。
しかしひとつひとつはとても小粒で、ネジネジと上に伸びているのがユーモラス。
おそらく風で種が飛んできて上手い具合にプランターで成長したのだろう、愛いヤツだのう。

かなり長く同じ家で暮らしているが、ベランダにこれほど様々なものがやってくるのはこの数年…正確に言うとこの二年。
2009年に母が亡くなったことと関係があるのか?と思いたくなるほどの不思議なベランダである。

最近、梨木香歩さんの小説を読み漁っているので脳内ファンタジー濃度が上がっている(笑)。
でもやっぱりただの偶然にすぎない…と思いつつ、大将(夫・仮名)に話したらあっさり言われた。

「おかあさんでしょ」
「そう?」
「鴨にチョコレートやってみたらよかったのに」

チョコに目がなかった母を思い出し、笑った。