三谷版「桜の園」を観た

この数カ月、父のことや何やかやで舞台どころではなかったのだけど久しぶりに観劇してきた。
アントン・チェーホフ作「桜の園」、三谷幸喜翻案・演出、出演は浅丘ルリ子市川しんぺー・神野三鈴・大和田美帆藤井隆青木さやか瀬戸カトリーヌ高木渉迫田孝也阿南健治藤木孝・江幡高志。

先行予約にも前売りにも間に合わなかったのだが、ふとパルコ劇場のHPを見たら「チケットレスサービス」で少しは販売しているようだったのでダメ元で。
平日マチネ一枚だったからか最前列真ん中の席が取れちゃってビックリ。
引っ越したらこれまでのようにはお芝居なんて観られなくなるだろうから、じっくりみっちり味わって参りやした。

以下ネタばれありますのでサトリます。じゃなくてタタミます。
(今回は大胆な?ネタばれなのでこれからご覧になるご予定の方は読まない方がよかですけん!)


全体のざっくりした感想は「楽しめたけどなんだか胃もたれ」あるいは「不思議な残尿感」、でも色んな意味で「贅沢な時間と空間を満喫」。

生ルリコさんは声が堪らなく美しく、華奢で優雅で気高くてまさに「ロシアの没落貴族」にはうってつけ…ただちょっとあの役は年齢的には無理があると思ったけども、まぁそれでも他にあんな女優さんは思い当たらない。
作品の中で二度ほどドスの効いた声を出す瞬間があって、その時はまさに「リリーさん」だったし(寅さんのマドンナではぶっちぎりにリリーさんファンです←誰に告白?)、今回の役柄とはかけ離れているけど「すいか」の教授を演じていたルリ子さんも大好きだったし、生で(しかもかぶりつきで)拝見できて良かった!

ルリ子さんと藤木さんは揺るぎなく貴族の兄妹で、お屋敷の主に相応しい風格が漂うのでそれだけで舞台が締まる。
ただ藤井隆青木さやかがちょっとこう…うんあれだ、ガシャガシャしすぎてて(ガシャガシャっつー表現は中居さんの影響、笑)過剰な匂いだったかなと。
三谷さんが「喜劇・桜の園」を作るにあたって敢えてそう演出したのは理解できる。
二人とも芝居そのものは悪くなかったし頑張ってたし(上からスミコ)、どちらか片方だけなら気にならなかったかもしれん…いえ勿論個人的な嗜好による感想です、エラソーでスミマセン。

何よりも心に残るのはフィールスという老執事を演じた江幡高志さん83歳!
朝日新聞のミタニンコラムにもこんなふうに書いてあった。
「ある意味、桜の園の成否は、フィールスのキャスティングにかかっていると言ってもいい」
「現役最高齢に近い江幡高志さんのいぶし銀の演技は、まさに今回の桜の園の見どころのひとつ」

特にラストシーンが素晴らしかった…あのフィールスの姿と声と言葉はしっかりと心に刻まれた。

長年誠実に執事として仕え、高齢になって少しボケてしまったのに執事魂は抜けず、でもちょっと妖精のようになっているフィールス。
そんな彼が物語のラストで、誰もいなくなった屋敷の床に横たわりふと上体を起こす。
そしてこちらを一瞬見据えて「未熟者!」と深い声で喝破する…。

遊び心満載でドタバタな要素もあり、ガシャガシャもしんみりも喜劇も悲劇もないまぜになっている三谷版「桜の園」が、あのラストシーンによって何割増しにもなった気がする。

前述したミタニンコラムの真横に藤山直美高畑淳子のお芝居の記事が載っていた。
高畑さんはインタビューで「ちょこっと出たその人がいいと芝居が良く見える、そんな芝居ができれば」と語っておられた。
いやーほんと、そんな役者さんたちは確かにおられてそんなお芝居を生で観られるっていうのは幸せなことだ!

嗚呼Wカンクローも観たかったよう!
南部高速道路も観たかったよう!
其礼成心中もふくすけもあれもこれも観たかったよ〜ッ!
(スミコ、心の叫び)

と、とにかくスマコンだけは!
どこにいこうとそれだけはッ!!
だからだから、いつなんだよぉスマコンはよお!!!
(最後はいつもコレだ…)