「歌わせたい男たち」を観た その1

【便宜上、19日〜16日の日付で12日に観た舞台の感想をUPいたしました。
その1から6まで順にお読みくださいませ。】

ベニサン・ピットという芝居小屋は東京は両国の片隅にひっそりと建っている。まるで倉庫のような小さな建物で、中に入ると一瞬‘ここで本当にプロのお芝居が観られるのか?’と不安になるような狭い空間である。
年季の感じられるその小屋はしかし、不思議に熱い空気を醸し出していた。

何もかも手作りであることをうかがわせる受付周り、華やかさとは対極にあるひっそりと薄暗いロビー。
そんな場所に「戸田恵子さんへ SMAP」というスパティフィラムに似た白く光る鉢植えはいかにも浮いていて一人ひそかに微笑んでしまった。

戸田さんはSMAPとも色々な仕事をしておられるからな、古畑vsSMAPではスーパーマネージャーのミッチー役をやったぐらいだし…と、これから観る芝居とは無関係な方向の記憶を手繰り寄せて気ままに楽しんだりするのも初・一人観劇の面白さだ。

ところでこの芝居を観られることになったのは、全て友人Sさんのおかげ。
以前から永井愛さんの作品には興味があったがなかなか機会に恵まれずにいた私に「こんなお芝居が今度あるよ、ネットでチケ予約が簡単にできるよ」と教えてくれた上に、数時間ドラを預かって下さるという有り難くて涙がチョチョ切れそうなお申し出までしてくれた。

この芝居が新聞などで取り上げられ評判になった後はチケットが非常に取りにくい状況になっていたので、早いタイミングで情報を貰ってよい日程(楽日前日)のしかも良席(端っこながら最前列)を得ることができたのも彼女のおかげだ。持つべきものは良き友だ、ありがとう!

彼女から芝居の内容をチラリと聞いただけでどうしても観たいと思ったのは、永井さんと戸田さんの魅力もさることながら作品そのものののテーマによるところが大きい。

歌わせたい男たち」の‘歌’とは何か。
‘歌わせたい’とはどういうことか。
‘歌わせたい男’とは何者か。

このお芝居について予備知識のない方はどうお感じになるだろうか。
「歌」が「君が代」のことを指すと言われた瞬間に、どんなことを思い浮かべるだろうか。

私の場合。
‘ああ。それは観なくては。是非観たい。今こそ観たい’だった。
常日頃、疑問に思い本能的に憤っていてもなかなか掘り下げて考えにくいテーマだったからだ。

続く